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手数料制度の概要

公証人が、公正証書等を作成した場合の手数料は、政府が定めた「公証人手数料令」という政令により定められています。

手数料令には、手数料のほか、旅費、日当についても定められています。

手数料は、原則として、証書の正本等を交付する時に現金で支払っていただきますが、例外的に、予納をしていただく場合があります(手数料令6条)。また、資力のないことが市町村長等の証明書により明らかな場合には、手数料等の全部又は一部の支払を猶予することができるようになっています(手数料令5条)。

金銭消費貸借契約、土地の賃貸借契約、土地の売買契約等には、公正証書に印紙税法による印紙の貼付が必要となります。なお、手数料には、消費税はかかりません。

公証業務に関する相談は、無料です。

手数料の種類

 

手数料令は、「法律行為に関する証書作成の手数料」「法律行為でない事実に関する証書作成の手数料」「認証に関する手数料」及び「その他の手数料」について、詳しい規定を置いており、計算の方式として、目的の価額により算定する方式、必要とした時間により算定する方式及び証書等の枚数により算定する方式を使い分けています。

法律行為に関する証書作成の基本手数料

契約や法律行為に係る証書作成の手数料は、原則として、その目的価額により定められています(手数料令9条)。

目的価額というのは、その行為によって得られる一方の利益、相手からみれば、その行為により負担する不利益ないし義務を金銭で評価したものです。目的価額は、公証人が証書の作成に着手した時を基準として算定します。

【法律行為に係る証書作成の手数料】

(目的の価額)

(手数料)

100万円以下

5000円

100万円を超え200万円以下

7000円

200万円を超え500万円以下

11000円

500万円を超え1000万円以下

17000円

1000万円を超え3000万円以下

23000円

3000万円を超え5000万円以下

29000円

5000万円を超え1億円以下

43000円

1億円を超え3億円以下

4万3000円に5000万円までごとに1万3000円を加算

3億円を超え10億円以下

9万5000円に5000万円までごとに1万1000円を加算

10億円を超える場合

24万9000円に5000万円までごとに8000円を加算


贈与契約のように、当事者の一方だけが義務を負う場合は、その価額が目的価額になりますが、売買契約、賃貸借契約のように、双方が義務を負う場合は、双方が負担する価額の合計額が目的価額となります。

数個の法律行為が1通の証書に記載されている場合には、それぞれの法律行為ごとに、別々に手数料を計算し、その合計額がその証書の手数料になります。法律行為に主従の関係があるとき、例えば、金銭の貸借契約とその保証契約が同一証書に記載されるときは、従たる法律行為である保証契約は、計算の対象には含まれません(手数料令23条)。

任意後見契約のように、目的価額を算定することができないときは、例外的な場合を除いて、500万円とみなされます(手数料令16条)。

証書の枚数による手数料の加算

法律行為に係る証書の作成についての手数料については、証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます(手数料令25条)。

売買契約、遺言等の公正証書作成手数料の具体的な事例の説明

売買契約

土地の売買契約を例にとると、売主は、土地の所有権を買主に移転する義務があり、買主は、代金を売主に支払う義務があります。したがって、土地の価格と売買代金の合計額が目的価額となりますが、手数料令は、当事者の一方が金銭のみを給付の目的とするときは、その額の2倍を目的価額とすると定めています(手数料令11条1号)。

売買代金が5000万円であれば、その2倍の1億円が目的価額となり、3の計算方式に従い、4万3000円が手数料になります。

賃貸借契約

建物の賃貸借契約で、賃料が月額20万円、契約期間が3年間とすると、3年分の賃料の2倍(手数料令11条1号)である1440万円が目的価額になりますから、手数料は、2万3000円になります。

賃料のように、定期的に支払が行われる定期給付契約の目的価額について、手数料令は、期間の価額の総額を目的価額としつつ、最高でも「10年間の給付の価額の総額を超えることができない。」と規定しています(手数料令13条)。したがって、土地の賃貸借契約のように、期間が30年になる場合でも、10年分の賃料の2倍が目的価額になります。

金銭消費貸借・債務弁済契約

金銭消費貸借契約は、貸主が金銭を貸し渡し、借主が借入金の返済を約束ることによって成立する契約ですから、借入金額が目的価額になります。

従たる契約である利息は、目的価額に含まれません(手数料令15条)。

債務弁済契約は、既に存在している金銭債務の支払方法を定める契約で、金銭消費貸借と同じく、支払金額のみが目的価額になります。

担保権設定契約

抵当権などの担保権設定を目的とする契約の目的価額は、担保の目的の価額又は担保される債権の額のいずれか少ない方になります。ただし、抵当権などの担保権設定を目的とする契約を、担保される債権に係る金銭消費貸借契約とともに公正証書にする場合は、その金銭消費貸借契約の債権額に、その債権額又は担保となる物件等の価額のいずれか少ない額の2分の1を加えたものが目的価額となります(手数料令23条2項)。

連帯保証契約などは、担保される債権に係る契約との関係では、従属的法律行為ですから、金銭消費貸借とともに公正証書が作成される場合には、金銭消費貸借の債権額のみが目的価額となります(手数料令23条1項)。

抵当権の設定も、従属的法律行為ですが、手数料令23条2項は、特に例外的規定を設けたものです。なお、根抵当権設定は、主たる債権に従属しない法律行為ですから、金銭消費貸借などとは別個の法律行為として、手数料の対象となります。

離婚給付契約

協議離婚の届出に際して約定した慰謝料・財産分与の取り決め又は未成年の子の養育料の支払を公正証書にする場合は、慰謝料・財産分与と養育料とを別個の法律行為として扱い、それぞれの手数料を算定し、その合計額がその証書の手数料の額となります。ただし、養育料の支払は、賃料と同じく定期給付に当たるため、支払期間が長期にわたる場合でも、10年分の金額のみが目的価額になります。

遺言

遺言公正証書の作成手数料は、遺言により相続させ又は遺贈する財産の価額を目的価額として計算します。

遺言は、相続人・受遺者ごとに別個の法律行為になります。数人に対する贈与契約が1通の公正証書に記載された場合と同じ扱いです。したがって、各相続人・各受遺者ごとに、相続させ又は遺贈する財産の価額により目的価額を算出し、それぞれの手数料を算定し、その合計額がその証書の手数料の額となります。

例えば、総額1億円の財産を妻1人に相続させる場合の手数料は、3の方式により、4万3000円です(なお、下記のように遺言加算があります。)が、妻に6000万円、長男に4000万円の財産を相続させる場合には、妻の手数料は4万3000円、長男の手数料は2万9000円となり、その合計額は7万2000円となります。ただし、手数料令19条は、遺言加算という特別の手数料を定めており、1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円を超えない場合は、1万1000円を加算すると規定しているので、7万2000円に1万1000円を加算した8万3000円が手数料となります。

次に祭祀の主宰者の指定は、相続又は遺贈とは別個の法律行為であり、かつ、目的価格が算定できないので、その手数料は1万1000円です。

遺言者が病気等で公証役場に出向くことができない場合には、公証人が出張して遺言公正証書を作成しますが、この場合の手数料は、遺言加算を除いた目的価額による手数料額の1.5倍が基本手数料となり、これに、遺言加算手数料を加えます。この他に、旅費(実費)、日当(1日2万円、4時間まで1万円)が必要になります。

作成された遺言公正証書の原本は、公証人が保管しますが、保管のための手数料は不要です。

任意後見契約

 

任意後見契約公正証書の手数料は、1契約(受任者が2名の場合は2契約となります。)につき1万1000円、それに証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます。報酬の定めがある場合でも、契約の性質上、目的価額は算定不能となるので、手数料令16条により1万1000円になります。

病院等に出張して任意後見契約公正証書を作成した場合には、遺言公正証書の場合と同様に、病床執務加算、日当、旅費が加算されます。

更に、任意後見契約は登記が必要であり、1契約ごとに、公証人が登記の嘱託をすることになっています。このための登記嘱託手数料は、1400円(手数料令39条の2)ですが、ほかに収入印紙代2600円及び郵便料金が必要です。

その他の法律行為の手数料

規約設定

マンションなどの建物の区分所有等に関する法律32条の規定による規約設定公正証書の作成手数料は、専有部分の個数により、同法律67条2項の規定による規約設定公正証書の作成手数料は、建物の棟数により、それぞれ手数料が決められています(手数料令22条)。

【区分所有等に関する法律32条の規定による規約設定の場合】

専有部分の個数が10個以下の場合

2万3000円

専有部分の個数が10個を超え50個以下の場合

10個までごとに1万1000円を加算

専有部分の個数が50個を超え100個以下の場合

10個までごとに9000円を加算

専有部分の個数が100個を超える場合

20個までごとに6000円を加算


【区分所有等に関する法律67条2項の規定による規約設定の場合】

建物の棟数が5棟以下の場合

2万3000円

建物の棟数が5棟を超える場合

5棟までごとに1万1000円を加算

委任状公正証書

委任状公正証書作成の手数料は、定額で7000円です(手数料令18条)。

株主総会の決議に関する証書

後記7の事実実験の手数料と同じです(手数料令20条、26条)。

企業担保権

企業担保権の設定を目的とする契約の証書作成手数料は11万円で、それを変更する場合の手数料は4万5000円です(手数料令21条)。

承認等に関する証書

承認、許可もしくは同意等に係る証書作成手数料は、1万1000円。

ただし、目的価額による手数料の額の10分の5が1万1000円を下回るときは、その額(手数料令17条)。

その他の証書作成の手数料

事実に関する証書作成の手数料

公証人は、自分で直接に見たり聞いたりした内容を公正証書にする事実実験公正証書を作成することができます。

手数料は、事実実験に要した時間と証書作成に要した時間の合計時間1時間までごとに1万1000円です(手数料令26条)。

事実実験が休日や午後7時以降に行われたときは、手数料の10分の5が加算されます。

秘密証書遺言

秘密証書による遺言方式に関する記載についての手数料は、定額で1万1000円です(手数料令28条)。

受取書又は拒絶証書

受取書又は拒絶証書の作成手数料は7000円です(手数料令27条)。

認証の手数料

私署証書等の認証

契約書などの私署証書の認証は1万1000円ですが、その内容を公正証書にした場合の手数料の半額が1万1000円を下回るときは、その下回る額になります(手数料令34条1項)。したがって、身元・財政保証書のように、金額の記載がないため算定不能となる書面の場合は、5500円が手数料になります。また、委任状の認証は、委任状公正証書の手数料の半額である3500円が手数料となります。

外国文の認証(外国文加算)

契約書等が外国語で記載されているときは、上記の手数料に6000円が加算されます(手数料令34条3項)。

宣誓認証

公証人の面前で記載内容が真実であることを宣誓した上で文書に署名・捺印し又は署名・捺印を自認したことを認証する宣誓認証の手数料は1万1000円です。対象文書が外国文であるときは、6000円の外国文加算があります。

私署証書謄本の認証

契約書等の謄本の認証手数料は、5000円です(手数料令34条4項)。

定款の認証

株式会社の定款に認証を受ける場合の手数料3~5万円(資本金額等により変動)です(手数料令35条)。定款には、印紙税法により、4万円の収入印紙を貼付しなければなりません。ただし、電子定款の場合は、印紙は不要とされています。

株主総会その他の集会の議事録や、建物の区分所有等に関する法律45条による集会の決議の認証手数料

上記各手数料は、2万3000円です(手数料令34条5項)。

電磁的記録の認証

電磁的記録についての認証の手数料は、1万1000円ですが、電磁的記録の内容を公正証書にした場合の手数料の半額が1万1000円を下回るときは、その下回る額になります(手数料令35条の2)。

執務を中止した場合の手数料

 

公証人が証書の作成等に着手した後、嘱託人の請求、又は嘱託人その他の列席者の責めに帰すべき事由により、これを完了できないときは、それまでの所要時間に従い、前記7の事実実験の例により算定した額を受けることになっています(手数料令33条)。

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その他確定日付などの手数料

確定日付の付与

1通につき700円(手数料令37条)

執行文の付与

債務名義の正本に執行文を付与することについての手数料は1700円・事実到来執行文、承継執行文等の手数料は3400円(手数料令38条)

正本・謄本の送達

1回につき1400円(手数料令39条1項)

送達証明

250円(手数料令39条3項)

正本・謄本の交付

1枚につき250円(手数料令40条)

閲覧

証書・定款の原本及びその附属書類の閲覧手数料は、1回につき200円(手数料令41条)

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